疑わしい取引の届出について
疑わしい取引の届出は、犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)の対象となる銀行や証券会社等のコンプライアンス部門やマネーロンダリング対策部門、金融犯罪対策部門などでは「ウタトリ」という略称で呼ばれる。
この「ウタトリ」という言葉は、一般の事業会社の人や金融機関等でも担当部門でない方は、なかなか耳にする機会は少ないと思うが、疑わしい取引の届出については、「犯罪による収益の移転防止に関する法律(犯罪収益移転防止法)」において特定事業者の義務として定められているものである。そのため、インターネットにおいて公開されている疑わしい取引に関連したガイドラインは、金融機関以外でも不正対策を担当する人には参考となる情報が多く含まれている。
疑わしい取引の届出について簡単に説明をする。この制度は、銀行や証券などの特定事業者からの報告を犯罪による収益のおそれのある疑わしい取引に関する情報を集約してマネーロンダリングに関する捜査に役立てることを目的にしている。また、マネーロンダリングについては「マネロン」という略称で呼ばれることが多い。この制度は、犯罪者に金融機関等の特定事業者が利用されることを防止し、特定事業者における社会からの信頼を確保するものである。金融機関等の特定事業者から届出された疑わしい取引に関する情報は国家公安委員会(警察庁)で集約されて、その情報の分析が行われ、捜査機関等に情報提供され捜査に活用されている。
例えば、特定の取引が規定回数以上ある場合、一律疑わしい取引である、と断定することはできないが、各業界向けに疑わしい取引に該当するかどうかの目安になるものがガイドラインとして公表されている。それが「疑わしい取引の参考事例」である。あくまで、参考事例を例示しているものなので、この事例と合致するものが全て疑わしい取引に該当するものではないことに留意する必要がある。特定事業者としてサービスの内容、お客さまごとの取引内容や頻度、そして属性等を踏まえて判断する必要がある。また、事例に該当しないものであっても特定事業者として、一般の取引と大きくことなるということで疑わしい取引に該当すると判断したものは届出の対象となる。
疑わしい取引の届出制度について、詳しく知りたい方は、JAFIC(Japan Financial Intelligence Center:警察庁刑事局組織犯罪対策部組織犯罪対策企画課犯罪収益移転防止対策)から公表されている「犯罪収益移転防止法の概要」を参照いただければと思う。特定事業者ごとのケースが紹介されており、各業界で発生している不正の手口などがわかりやすく記載されている。 なお、各行政庁において所管事業者向けに疑わしい取引に関するガイドラインが作成・公表されている。同ガイドラインでは、 "情報"というワードをよく見る。疑わしい取引を見つけるにおいては、情報が重要であり、その情報をどのように分析し、活用するかがポイントとなるということが理解できる。
